詳細な結果については、グラフの通りです。
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Aの「山間 特別純米仕込み11号 かめ口直詰め」は山間ブランドのスタンダードで、味わいのインパクトが端的に感じられるという理由で基準酒に選びました。お客様は、「華やか」「ぴちぴち」「甘み」などのことばでこのお酒の特徴を表現しています。
このAと比較した時のB~Eのお酒の感想について、以下の様なポイントをつかむことができました。
B: 山間・特別純米仕込み11号かめ口瓶燗
BとAの違いは火入れの有無です。火入れをしたBは生酒であるAより穏やかな印象になるのではないかと予想していました。
やはり皆様の回答には「すっきり」「穏やか」などと表現されています。また味わいについては「ビター」を感じた方が多かったようです。
落ち着いた香りとビターな味わいが特長で、濃くても穏やかな味わいが山間のなかでも食中酒向きだといえます。
C: 山間・特別純米7号かめ口直詰め無濾過生原酒
同一タンクで仕込んだお酒の違いを楽しむことがテーマですが、仕込みタンクが違うお酒も試してみようということでラインナップに加えました。
CはAと同じ酒米で精米度合も全く一緒ですが、仕込みタンクが違います。もしかしたら明確な違いが現れにくいのではないかと予想していたのですが、多くの方が「しゅわしゅわ」というような発泡感を表現し、酸味を強く感じていらっしゃいます。そのため、Aと比べてやや淡めで軽快感のある味わいという感想を得ました。
同スペックでもタンクの違いによって発泡感の強弱に違いがあるというのもおもしろいポイントですが、明確な酸味の違いという点が当店にとって興味深い結果でした。このような酸味の違いは何に由来するものなのか、次回蔵元にお会いするときにぜひ質問してみたいポイントです。
D: 越の白鳥・特別純米仕込み11号無濾過原酒との比較
DとAは、搾りの部位と火入れの有無というふたつの相違点があります。Dは荒走りと責めの合併で火入れ、Aが中取りの火入れ無し(生酒)です。
Dは「すっきり」「スルスル入る」「飲みやすい」などのことばで表現された方が多く、全体的にAよりもおとなしく穏やかな印象でした。数字上はAと比較して弱い印象がありますが、コメントでは好意的な内容が多く、違う味わいによる別の美味しさを捉えていることがわかります。
このおとなしく穏やかというDの特長は、中取りで火入れされているBと同じ傾向です。しかしBではビターな味わいを感じる方が多かったのに対して、Dではビターさは弱めという結果が出ました。この2点に注目してBとDの比較をすると、香り、甘みはDがBよりも弱い傾向にありますが、Aとの比較ほど顕著ではありません。つまり、火入れの有無と搾りの部位は、印象という点においては同じような作用をしていることがわかります。一方でビターさに関してはDは、火入れであっても苦味も穏やかな結果となり、やはりコメントの「スルスル入る」「飲みやすい」と言った言葉を裏付ける結果となりました。
中取りを贅沢に集めた山間が新潟酒の淡麗イメージを覆す味というなら、越の白鳥はそれらが同居した毎日飲んでも飽きない美味さをもつお酒ということです。
E: 山間・特別純米仕込み11号にごり酒
最後のEは搾りの違いです。にごり酒はインパクトがあるので、Aと比較して全体の印象も酸の印象もかなり違うのではないかと予想していました。
印象は数値では濃厚とした人が多くみられます。これは予想した通り、香りの強さと濁りによるインパクトのためだと考えられます。一方コメントでは発泡感によって「さっぱり」「フレッシュ」との意見も見られます。この「さっぱり」などのコメントは酸味の数字に表れていて、強い酸味を感じたとの回答が多く見られました。もちろん発泡感による刺激の誤認もないとは言えませんが、濃厚でありながら爽やかさが同居するこのお酒の特徴がグラフからも読み取れる結果となりました。
もうひとつ特徴的な点として、甘みを控えめに感じる人が多かったことがあります。一般的ににごり酒は甘いという先入観がありますが、山間の場合はAの感想にも出たようにしっかりとした甘みが印象的なためか、Dの発泡感を伴う爽やかさやもろみの優しい甘味が弱い印象となったようです。しかし、コメントでは「果実味」などの言葉も多く見られ、甘さ自体が不足しているわけではなく、甘さの傾向が異なっていたのだと読み取れます。
Eのお酒は、一口飲んだ時のリアクションが一番大きかったお酒です。ご自宅でデイリーに楽しむのはもちろん、特別な日の乾杯酒としてもお楽しみ頂けると思います。(開栓にはくれぐれもご注意下さい。)
総括
今回の山間と越の白鳥の飲み比べからは、以下の様な特長がみえました。
火入れの有無、搾りの違いといった日本酒に関する本を読んで得られる知識や情報は、実際に比較体験することでそれぞれのお酒の個性やおもしろさという形で実感して頂けたと思います。
同一仕込みタンクの利き比べは、当店で越の白鳥に続けて山間の取り扱いが始まってから、ぜひお客様たちに提示させて頂きたいと温めてきたテーマでした。今回はその念願が叶った嬉しい会となりました。