次世代を醸す若き兄弟の技の結晶
彗星のごとく現れた、艶やかな透明感きらめく酒「相模灘」


「相模灘」を醸す久保田酒造は、神奈川県下第三の政令指定都市・相模原市にあります。こう書くと大都会にある酒蔵と思われてしまいますが、市町村合併前は旧津久井郡津久井町で、神奈川県の水源地帯である城山ダム（津久井湖）も程近い緑豊かな山峡にあり、酒蔵の前を小さな小川が清らかな流れを見せ、森に囲まれた静かな佇まいがまるで一幅の絵のように美しく、とても印象的な風景が展開しています。
清冽な丹沢山系の水に恵まれたこの地に弘化元年（1844年）に創業。当時と変わらぬ自然景観と約170年の歴史を背負った趣きのある母屋が建つ久保田酒造は、もともと商家だった久保田家が始めましたが、その経営はいわゆる番頭に委ねたオーナー蔵元であり、久保田家は酒造りには全くタッチしないという状態が長らく続いてきました。
代々酒蔵の経営と酒造りを担ってきた杜氏の引退で久保田酒造は廃業の危機に直面しますが、オーナーの久保田家末弟・久保田博さんが継承し、現在はその長男・久保田晃さんが実弟の久保田徹さんとともに力を合わせて真摯に酒と向き合い、蔵は新たな歴史を刻み始めました。

次世代を醸す若き醸造家の酒は、その艶やかな透明感とフレッシュで整った旨味が映える酒質で飲み手の心をとらえ、一躍注目を浴びて今や神奈川県で最も存在感のある酒に成長した「相模灘」。
平成18年（2006年）から蔵元杜氏の重責を果たしてきた晃さんに代わって弟の徹さんが24BY（平成24醸造年度）より杜氏に就任し、新たな転機を迎えています。
京都市立芸術大学出身で芸術家肌の兄と全日本スノーボード選手権で優勝経験を持つスポーツマンの弟。その静と動のコントラストを投影したかのようにメリハリの利いた飽きのこない美味しさが「相模灘」という酒にはあるように思います。